なんてこったい

「では宿題を配ります。まずは英作文」
バサリ、と手元に回されるプリント。かなり分厚い。
「これは全部やってこなくて良いです。1章目をやってきてください」
まぁ、さすがにそうか。安心。でもそれにしても英作文40問以上あるんだけどなぁ……。
「次に文法」
今度はB4のプリントが回されてきた。ずいぶんと、その……老眼には厳しいフォントサイズでいらっしゃる。
「と、文法もう一枚」
さらに配られるB4プリント。おいおい正気か。
「これは半分でいいです」
救済措置(?)も右耳から左耳。
周りでは皆、溜息混じりに帰宅準備を進めている。
「あ、まだですよ。短文読解」
まさか"宿題で人を殺せるかどうか"という命題でも探求しているのだろうか。B4一枚追加。
「あ、まだ帰らないで。短文読解もう一枚。これはオマケみたいなもんです」
……帰るか。
「ちょっとちょっと。長文もあるから」
宿題を全部やったら一年間で偏差値が30上がった生徒がいる、という話を胡散臭く感じたものだが、なるほど疑うべきは"偏差値が30上がった"ことではなく"宿題を全部やった生徒がいる"ことの方だったというわけか。これは巧妙な詐欺ですね。
だが配られたB4プリント2枚に目を通せば、まぁ、長文読解にしてはそれほど殺人的な分量ではないことが分かる。設問も少ないし……。
「あ、設問は解かなくていいです」
「？」
それはつまり、読むだけでいいということなのだろうか。
「来週までに全部和訳してきてください」
「…………」
長文読解じゃなくて長文和訳だった。